仲間のメールでYouTubeにアップされた動画をみた。ちょっと話題になっている。
振動台の上には、同一形状の2棟が並んでいる。
実験の主催者である防災科学技術研究所よりDLした資料(pdf)を見てみる。
直感的には、1階間取りはなかなか厳しい感じだ。わざとこうしているのだろうが。
一方(試験体1)は、耐震等級2を満足する施工がなされており、もう一方(試験体2)は基本仕様は同じだが、柱の足元が基準を下回る施工不良(ちょっと言いすぎ?)とでもいうか、完全には留めつけられていない、いわゆる結果としては手抜き工事、あるいは瑕疵の状態とした設定となっている。
不完全な建物に大きく損傷、あるいは倒壊というのが実験前の予測として解答できれば及第点はもらえるはず。なのだが。
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| ※公開資料より |
| ※実験直前のアナウンス説明: | |
| 現実にもあり得るプランとなっている。1棟約30トン。 試験体1は耐震等級2の性能を持っている。 試験体2は柱頭、柱脚の接合部が不十分。(上に記したように基準からすれば施工不良といってよいだろう) 基準法の想定する地震力の約1.8倍の人工地震波を短辺方向へ一方向入力。 住宅が計画上基準法の壁量1.44倍程度あるため、強めの入力での実験を行う。 1棟あたりには加速度、変位、ひずみなどの測定器を360ポイント、その他を設置している。 試験体2の倒壊、大変形を予想。 [11/01 説明を追記] | |
カウントダウン開始。 5 4 3 2 1 ・・・・・
動画サイトに映像をアップされている方がいらっしゃいましたので、それを貼り付けさせていただきました。
| [高画質で再生] 09.10.27 E-ディフェンス公開実験 [WIKI] |
| ※左が施工不良棟 映像は消去されているようです[2010/10/04] |
| ※この動画は消去されているようです[2009/11/15] | ※右が施工不良棟 |
| ※他に似たアングルの映像がYouTubeにアップされています[2009/11/15] |
| [WIKI] で削除された映像をYouTubeで見つけました[2010/10/04追加] |
| 貴重映像をYouTubeで見つけました[2014/8/15追加] |
映像を見る限りでは、大きな地震動に対して、施工不良のもの(試験体2)の足元が交互にギッタンバッコンして、建物全体が揺れに合わせて浮き上がる様子がよく見える。施工が不完全であると、このような状況になることがよく分かる。
計画通りにちゃんと施工されたほう(試験体1)は、揺れに耐えて、頑張っているようには見えた。
しかし、最後の方の段階では、2階床レベル部分で建物がへし折れるように崩れ落ち、2階と3階の箱の塊がそのまま転がるように崩れ落ち、完全に倒壊。1階は完全に瓦礫と化してしまった。
映像はショッキングなものである。
建物がこういった壊れ方をするのを見るのはどのような建物であっても嫌なもので、立体が大きいぶん衝撃的でもあった。
施工不良棟のほうも、損傷は大きそうだが倒壊はしなかった。明らかに建物の足元は基礎の上に載っているだけの状況となっているはず。しかし、中に人がいたとしても建物に生存空間を得ることの可能性は大である。結果としては、基準からすると不完全な足元の留め付けであったことが、力をまともにうけずにすむ状況となったと考えればよいのだろう。
映像を見る限りでは、ギッタンバッコンしているタイミング次第ではどうなっていたのか、とは見える。しかし、この実験で施工不良でも倒れなかったということが実験結果として大きく喧伝されることには危惧したい。
振幅、周期とこの建物の固有周期との関係など今後の検証報告で分かるだろうが、構造計算でOKの結果がでても倒壊に至ってしまったとすると、何処に問題があったのかの検証は早急に行う必要があるはずだ。できるなら、検証後に改善したもので、同一条件下で再度実験をする必要もあるのではないか。実験とはそういうもの。
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| ※公開資料の平面図に描き入れています |
改めて図面を見てみると、筋違いの配置がこれでよいのかの疑問は出てくる。間取りの南北の壁は1Pで、しかも片筋違い。筋違いの配置は、同一軸線上には「対」で入れるのが基本ということから考えれば、少なくとも1Pならタスキ掛けにすることが素直な判断と思われる。水平構面が「剛」に近いということで、全体壁量は足りていたということなのか?これは計算で確認する以前の問題ではないか。あきらかにバランスを欠いていたように見えるのだが。
また、3階建てで3.5寸角の出隅通し柱を独立柱にするほどの度胸は設計者としてはなかなか持てない。集成材であったって、断面は相当に悩む部分だろう。計算上OKが出たんでしょうが、壁で対応するとしても感覚としては最低でも1Pを長手方向(できれば短辺側だが)には入れておきたい。ただ映像の壊れ方では、効果は無いかもしれないが。だったら、どうしたらよいのかと頭を悩ませたいとことろのはずだ。設計の担当者は相当に悩んだとは思うのだが。
筋違い端部の金物はどういったものであったのだろうか。ある程度以上の変形に至ってしまえば、筋違いは脆い壊れ方になることは分かっており、まさにその結果が現れてしまったように見える。そこまでの変形に至ることが無いと想定されていたのだろうか。
片筋違いでは力の方向で圧縮と引張りで耐え方が異なる。とりあえず告示では倍率で評価しているが便宜的なものと考えている。固定金物が改良されて圧縮でも引張りもで同等と考えてよいとしているのか。(便宜的にはしているわけだけれど)
左右に揺すられるたびに、接合金物のビス(釘ではなくビスタイプ、箱型との予測)が抜けていく様子は過去の実験などからは予測もできそうだが。徐々に壁量が足りなくなっていった可能性はあるかもしれない。
筋違いにLVLを使ったのも、強度やばらつき低減など理解はきるが、柱、横架材の樹種は何?接合部としての金物と留付け法など相性はどうであったのか。これも予備実験はしているはずと思うが。
外通りと内通りの剛性のバランスを明らかに悪くした理由はなぜなのか。
いろいろ気にかかることが出てくるのだが。
時間経過と共に壁の破壊がどういった順番で進行していったのかなどのデータは取られているだろうから、公開される報告を待ちたい。
人工の地震波とはいえ、自然の驚異には謙虚に望むことが必要だ。たまたま、この地震波でのことであり、力ずくでそれに耐えるには、試験体といえども計画上考えるべき基本に忠実なものであったほうがよいという感想をこの映像を見た限りでは持った。
こういった実験は費用もかかることから、数多く出来るわけではないが、成功しましたということだけでなく、想定外の結果から何を学ぶのか、次に活かす成果とできるものが何であるのかを確認することが重要であろう。ここから得られる成果により、実際に起きる地震に対して被害を減らすための知見を得ることが最大の目的であるはず。
力で何処まで地震に耐えると考えられるのかには議論も必要ではないか。免振という力をかわす発想は建築の仕組みとしての有効性に期待されている。力を受けすぎない仕組みについての研究が進むことも期待したい。
下の写真は2006年に関西のある市街を散策していて撮ったもの。誰が見ても・・・と思うのだが。はたして、こういう場合はどのように考えるのか?現実的な問題として解決する必要があるのではないかと。水平構面等で解決法を考えているのかもしれないが・・・、外観からは読み取ることは出来ない。こちらに問題があれば直接人命に関わること。建築で解決できることことだけではない条件も含んでいるのだが。
実大実験の直前に、試験体を「現実にもあり得るプランとなっている」と説明しているが、見た目にはそれを否定できない現実がたしかに散見される。
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【Eディフェンスの実験映像】
・10月27日 人工地震波 160% 全景(裏面) [200911.30公開]
http://www.bosai.go.jp/hyogo/img/dougafile/20091027.wmv
【関連する記事】
・ケンプランツ建築・住宅
長期優良木造3階建てが「想定通り」倒壊(2009/11/02)
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20091030/536517/












大昔から、日本の耐震建築技術の常識に「日本家屋はきしみ、歪む事によって建物に掛かるパワーを逃がして倒壊を防ぐ」という考え方がある。 どこの専門家か何が「優良」か知らんが、その程度の常識も知らずに「耐震」とか笑える。
動画を見ても、耐震不完全な方が上層階がコンニャクのように歪んで揺れのパワーを逃がしている。 対して、「優良」の方は変形しないからモロに一階の柱に上の重量の揺れのパワーが集中して、横揺れ一発で折れてる。
「上層階に水槽を作る事によって揺れのパワーを逃がす」などの技術もある中で、「強度をあげたから耐震」とか、どこのバ力設計士だ。
歪む事を前提に隙間を作る土台を持つ清水寺の舞台組みや、お城や五重塔の芯柱構造なんかを考えた昔の棟梁達が、草葉の陰で失笑してるわ・・・(ため息)